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Chapter 15 - エピソード3:雪の中の目

吹雪が世界を飲み込んだ.風は千本のナイフのように街の通りを切り裂き,白い斑点をまき散らして肌に刺さった.提灯は揺れ,シューという音を立て,炎は一つまた一つと消え,路地や広場は暗闇に包まれた.人々は家に駆け込み,ドアはバタンと閉まり,雨戸はガタガタと音を立てた.それでも嵐は,まるで空そのものが嘆き悲しんでいるかのように,唸り声をあげていた.その中を,ループ・リーパーが駆け抜けた.息は荒く,イシュン・シンダとの戦いで胃がむかむかしていた.怒りに燃え,打ちひしがれ,夜空に逃げ惑うイシュンの顔が頭から離れなかった.ループは剣を下ろし,彼を助けた.しかし,彼を助けたこと自体が,彼自身の傷を残した.イシュンが自分を許してくれるのか,それとも助けたことが二人を終わりのない戦いへと導くのか,彼には分からなかった.それでも彼は追い続けた.通りを通り過ぎ,角笛を見て道を空ける人々を通り過ぎた.彼らはもはや石を投げつけなかったが,嵐の中の霜のようにかすかな囁きが彼を追いかけてきた.「鬼の子だ...」「この雪の中でも,彼は影のように走る...」「あまり長く見ないで.悲しみをもたらすから...」優しい言葉と静かな恐怖が混ざり合った.彼が通り過ぎると,中には腕を組んだ奥に同情を隠した表情を浮かべる者もいたが,ルプはそれを同じように感じていた.彼は,距離に塗られた優しさの中を歩く,よそ者だった.温かさは確かにあったが,彼が触れることはできなかった.そして――彼は凍りついた.嵐は変わった.甲高い風の音の中,サンダルの下で雪が砕ける音の中,別の音が夜に忍び寄ってきた.それは,この場にふさわしくない音だった.足音.急ぐ様子もなく,必死な様子もなく.だが,ゆっくりと.慎重に.風に呑み込まれたはずの世界で,石を踏み鳴らすブーツのリズム.一歩一歩が雷鳴のように響き,狭い路地に響き渡り,まるで街全体が彼と共に歩いているかのように増幅された.ループは息を呑み,振り返った.最初は雪しか見えなかった.白い吹雪が暗闇に舞い,通りを覆い隠していた.しかし,嵐の幕の隙間から,人影が現れた.彼は背が高く,遠くからでも路地に存在感を放っていた.髪は白かったが,年齢のせいではなく,雪の風の先まで広がる荒々しいカールで,先端には血のように赤い筋が走っていた.裾が破れた着物は,まるで生きている影のようにうねり,黒と深紅の布地が嵐に溶け込んでいた.そして,角笛が鳴った.それらは彼の頭蓋骨から長く残酷に突き出ており,刃よりも鋭く,先端は月光にかすかに輝いていた.ループは膝の力が抜けていくのを感じた.彼自身の角――小さく,矮小なもの――は,この怪物のような尖塔に比べれば,子供の遊びのように思えた.腰には四本の剣が,左右に二本ずつぶら下がっており,柄は黒い布で包まれていた.嵐の中でも,鋼鉄はかすかな深紅の光沢を放ち,まるで既に血に染まっているかのようだった.しかし,彼を捉えていたのは目だった.二つの剣は赤く輝き,しかし同じではなかった.片方の目は雪を焼き尽くす石炭のように燃え,傷だらけの瞼がその輝きをしっかりと覆っていた.もう片方の目はかすかに揺らめき,より暗く,しかしより深く,果てしない闇の中で弱々しく燃える蝋燭のように輝いていた.二つの剣は共にループの心臓を貫いた.その存在は微笑んだ.傷つけるほど鋭い笑み.ループは動けなかった.息が空気を曇らせ,剣を握る手は震えていたが,力は入らなかった.イシュンの怒り,盗賊の刃,そして世界の憎悪に立ち向かってきたが,今回は違った.これは憎しみではない.これは避けられない運命であり,一歩ずつ彼に向かって歩いていく.嵐そのものが鬼の前に屈服するかのようだった.雪が足元で渦巻き,足音は本来あるべきよりも大きく響き,その響きの一つ一つがループの骨に突き刺さった.走れ,と心の奥底から囁かれた.走れ,さもないと二度と動けなくなる.​​しかし,ループは走らなかった.走ることができなかった.足は地面に根を張り,人影に見張られ,凍りついたように動けなかった.ほんの一瞬,世界が静止した.嵐は静まり,風は止み,雪は宙に浮かんで凍りついた.その静寂の中,鬼のような姿は首を傾げ,壊れ​​た玩具,あるいはまだ鍛え上げられていない武器を観察するように,ループをじっと見つめた.彼の笑みは深まり,燃えるように輝く目の下の傷跡は歪んだ.そして,現れた時と同じように突然,嵐が再び押し寄せた.人影の姿は雪の中でぼやけ,まるで丸呑みされたかのように消え去った.意識を失った後も,彼の足音はループの体に深く響き,激しく脈打っていた.少年は凍てついた大地を掴み,息を荒くしながら膝から崩れ落ちた.あの人影は誰だ?いや,何者だ?ループの指は震え,角に触れた.初めて,彼は角に呪われているのではなく,それが何を意味するのかという恐怖を感じた.見知らぬ者の長く恐ろしい角は,悪夢へと引き伸ばされた鏡のようだった.これが彼の運命だったのだろうか?一歩ごとに死を背負い,言葉など必要とせず,ただ存在さえあれば他人の魂を砕く生き物に?涙が彼の視界を曇らせ,冬の空気は熱を帯びていた.彼は父のことを思った――世界の残酷さにもめげず,彼を人間らしく保ってくれた温もりを.彼はイシュンのことを思った――傷つき,怒り狂いながらも,それでも生きている....そして彼は,嵐の中を燃えるように赤く輝く瞳を想った.心の奥底で,彼は知っていた.あの姿は過ぎ去る幻影ではない.ループの行く手に投げかけられた影,決して消えることのない影なのだと.二人の運命は重なり合い,世界そのものがそれに応えて震えたのだ.ループはゆっくりと立ち上がり,剣を腰に下げた.彼の心は悲しみと恐怖に燃えていたが,その奥底には新たな糸が張り詰めていた――決意.もしこんな怪物がこの世を闊歩しているのなら,ここで立ち止まるわけにはいかない.父の遺志を,そして自身の悲しみを,震えで終わらせるわけにはいかない.たとえその道があの笑み,あの角,あの瞳へと繋がるとしても,一歩一歩,前に進んでいくつもりだった.嵐が吹き荒れ,街が眠りにつく中,ループは雪に向かって囁いた.「いつか,お前と対峙する.たとえ千回死なねばならなくても.」雪が彼の言葉を運び去り,夜空へと消えていった.しかし,視界の彼方,どこかで,かすかな笑い声がこだました.そして,ループスラッシャーの物語は,より深く,闇へと渦巻いていった.続く...

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