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Chapter 17 - 第5話:絶望の形

霧は静まり返っていた. カエルとマジクは焚き火の跡のそばに座り,二人とも口をきかなかった.炎は小さくなり,心臓の鼓動のように脈打つ淡い青い光に取って代わられていた.周囲の世界は息を潜めているようだった.待ち,見守っているかのように. マジクはまだ信じられなかった. 涙を流し,真実を知り,カエルが自分の名前——本名——を呼ぶのを聞いた後でさえ,すべてが現実ではないように感じられた.彼の心は満たされていたが,同時にもろかった.地震の後のガラスのように. やがてカエルが話し始めた.感情のせいでその声は低く,かすれていた.「マジク...もう一つ話しておかなければならないことがある.教団についてだ」 マジクは顔を上げた.瞳には疲労がにじんでいたが,集中していた.「正体がわかったの?」 カエルはゆっくりと頷いた.「そうだと思う.だが,俺一人では説明しきれない.皆が必要だ」

集結

カエルが二人を見つけ出すのに数時間を要した. 最初に戻ってきたのはミラだった.彼女は疲れ果てた様子で,目は赤く,鎧を肩にだらりと下げていた.焚き火のそばにカエルと並んで座るマジクの姿を見て,彼女は驚きに少し口を開いた. 「マジク」彼女はささやいた.「無事だったのね」 彼は微かに微笑んだ.「たぶんね」 遅れてやってきたリンは,コートが破れ,表情は読み取れなかった.彼はグループから数歩離れたところで立ち止まり,カエルを,それからマジクをちらりと見てから呟いた.「この焚き火がまだ燃えてるとはな」 カエルは地面を指し示した.「座れ.二人とも」 彼らは渋々従った.彼らの間の空気は張り詰め,気まずく,口に出せない罪悪感の重みに沈んでいた.カエルがついにそれを破るまで,沈黙が長く続いた. 「話さなければならないことがある」彼は言った.「不死の教団についてだ」 リンは鼻で笑った.「今さら何を言うんだ?あいつらは狂人だ.動くものすべてを殺すデータの幽霊だろ」 「違う」カエルは静かに言った.「奴らは幽霊じゃない.データでもないんだ」 マジクは炎を見つめた.「奴らは,僕たちなんだ」 ミラが眉をひそめた.「どういう意味?」 カエルは深く息を吸った.「教団はNPCの集団じゃない.クエストラインでも派閥でもないんだ.それは...別の何かだ.プレイヤー自身から生まれたもの.俺たちがログインした時に,この世界に持ち込んだものからできているんだ」

明かされる真実

火影が揺れ,彼らの顔に長い影を落とした. 「ヘッドセットを装着するすべてのプレイヤーは,感情を通じて接続される」カエルは続けた.「それがエイエンの仕組みだ.思考を読み取るだけじゃない.それを『感じる』んだ.精神をマッピングし,感情をデータに変える」 マジクの心臓が痛々しく脈打った.「それって...」 カエルは頷いた.「そうだ.教団はそのデータからできている.絶望,怒り,孤独の残り香——俺たちが隠している断片からな.直視することのできない自分の一部だ.それらはゲームに入ったからといって消えるわけじゃない.ここに生き続け,形を成すんだ」 リンの顔が暗くなった.「つまり,俺たちが戦ってきたあのモンスターどもは...人間だったってことか?」 「人間じゃない」カエルは言った.「人間の欠片だ」 ミラの声が震えた.「だから,死ぬ時にささやいたのね...」 マジクは見上げた.「彼らは僕しか知らないことを言った.僕が前に考えたこと.彼らが話した時,それは自分の声みたいに聞こえた.それに,彼らも生きている存在なんだ.そこも興味深いけど」 カエルは重々しく頷いた.「中には,お前自身である者もいるからだ.奴らは,形を与えられた全員の『最悪の思考』なんだ」 霧が周囲で渦巻き,まるで聞き耳を立てているかのように反応した. カエルの口調が和らいだ.「エイエンは現実から逃避するための場所であるはずだった.だが,アバターの影に隠したからといって感情は消えない.ログインするすべてのプレイヤーが痛みを,恐怖を,絶望を持ち込む.やがて,そのすべての暗闇が形を見つけた.製作者たちは,人々が現実を少しの間忘れるための手段を求めたんだろうが,おそらくこんなことは予想していなかったはずだ.あるいは俺の推測だが,製作者たちは自分たちのゲームでこんなことが起きていることすら知らないのかもしれない.少なくとも俺が見る限り,奴らは本物の製作者からも巧みに隠されている」 「教団...」ミラがささやいた. カエルは頷いた.「奴らが不死の教団と名乗るのは,絶望こそが永遠だと信じているからだ.絶望を糧にする.人生がただ止まってしまい,二度と傷つかずに済むようにという願いをな」 その後に訪れた沈黙は耐え難いものだった. マジクは炎を凝視し,声を震わせた.「じゃあ,僕たちが奴らと戦う時...予想もしないやり方で自分自身の一部を殺しているの?」 カエルは目を閉じた.「殺すのではないかもしれない.思考を解放しているんだ.それらは消えずに残るが,より穏やかな形で思い出させてくれるようになる.たとえそれが悪い記憶だったとしてもな」 ミラは膝を抱えた.「でも,もしそれが本当なら...戦う相手が誰もいなくなったら,どうなるの?」 誰も答えなかった.

現実の重み

その後,他の者たちが休みに行った後,マジクは一人で座っていた.仮想の月の下で,霧は微かに銀色に輝いていた.その静寂は平和なものではなかった.重苦しく,語られぬ言葉たちがうごめいていた. 彼は教団の顔を思い出した.瞳の輝き,自分の思考の残響のように聞こえたあの声.「我らはお前だ...覚えている」. それは恐ろしいことだった.だが同時に...馴染み深いものでもあった. 彼は,母親が自分に話しかける時に見せた,自分を通り越して虚空を見るような目を思い出した.父親が壁が揺れるほど激しくドアを閉めた時のことを.自分が消えてしまったら世界は気づいてくれるだろうかと,ベッドで横になりながら考えていた夜のことを. 彼は気づいた.エイエンは彼に逃げ場を与えていたのではない.彼が逃げ出してきたすべての真実と,向き合うことを強いていたのだ. 霧が微かに煌めいた.柔らかく,歪んだ声がその中から響いた. 「マジク...」 彼は鋭く顔を上げた.カエルではない.システムでもない.それは彼自身だった. 霧の向こうに影が形作られた.自分と同じ形,自分と同じ瞳.だがより暗く,うつろで,震えていた. 「なぜ私と戦うの?」影が尋ねた.「私は,覚えているほうのお前だ.一人で泣いていたほうのお前だ.叩かれたほうだ.消えてしまいたかったほうのお前だ」 マジクは後ずさりした.「違う...君は本物じゃない——」 「ここでお前が浮かべている笑顔よりも,私のほうが本物だ」声がささやいた.「お前が私を作ったんだ.私を見なくて済むように,このアバターを作り上げたんだ」 影が手を伸ばした. 「だが私は敵じゃない.私はお前の『傷』だ」 マジクの呼吸が速まった.「なら,僕に何を求めてるの?」 「ふりをするのを,やめてほしいんだ」 霧が押し寄せた.しかしそれが彼に触れる前に,カエルの声が空気を切り裂いた. 「マジク!」 カエルが剣を抜き,恐怖に目を見開いて駆け寄ってきた.影は音を立ててノイズへと溶けていった. マジクは喘ぎながら膝をついた.カエルが隣にひざまずき,彼の肩を掴んだ.「何を見た?」 マジクの声が裏返った.「僕だった.僕の姿をしてた.僕の『傷』だって言ったんだ」 カエルの表情が厳しくなった.「ついに始まったか」

教団の真の目的

翌日,彼らは再び集まった.カエルの顔は青ざめ,ミラは怯えた様子だった.リンは珍しく沈黙していた. カエルは立ち上がり,コード化された風にマントをなびかせた.「ようやく理解した.教団はエイエンを破壊しようとしているんじゃない.苦痛を消し去ることで,ここを『完璧』にしようとしているんだ」 マジクが勢いよく顔を上げた.「苦痛を消し去る?」 カエルは頷いた.「奴らは,あらゆる絶望の断片を——人間が忘れたがっているすべての感情を——吸収すれば,完全になれると信じている.永遠になれるとな.だが奴らが理解していないのは,苦痛がなければ,人間性は何も残らないということだ」 ミラがささやいた.「プレイヤーから...絶望を集めているの?」 「そうだ」カエルは言った.「エイエンで人が死ぬ時——心が折れてログアウトしたり,諦めたりした時——ゲームはその痛みを消し去らない.それを新しい何かに作り変えるんだ.そうやって教団は増殖していく」 リンが拳を握りしめた.「じゃあ,俺たちは今まで奴らに餌を与えてたってことか.殺すたびに,データはシステムに戻るだけなんだから」 カエルの瞳が暗くなった.「その通りだ」 マジクは恐怖に目を見開いて彼を見た.「じゃあ,どうやって止めるの?」 カエルは地平線を見つめた.そこでは霧が暗くなり,嵐のように荒れ狂っていた.「破壊するんじゃない」彼は静かに言った.「奴らを『癒やす』んだ」

霧の心臓

次なる旅は,世界の終わりを思わせる広大な平原「霧の心臓」へと彼らを導いた.地面はガラスのような反射に覆われ,その一つ一つに異なる記憶が映し出されていた.笑い声.涙.怒り.孤独. 中央には,大地の上に浮かぶ巨大な姿があった.渦巻く顔と声で形作られたその体.教団の核(コア)だ. 「我らはお前たちが置き去りにしたものだ」何百もの声が重なり合って言った.「お前たちは我らを見捨てた.モンスターと呼んだ.だが,我らを傷つけ,血を流させたのはお前たちだ」 カエルが一歩前に出た.「お前たちの正体はわかっている.俺たちは破壊しに来たんじゃない」 その姿が冷たく笑った. 「嘘だ.お前たちは安らぎを求めている.安らぎは感情が死んだ時にのみ訪れるのだ」 マジクが叫んだ.「そんなの嘘だ!感情があるからこそ,僕たちは人間でいられるんだ!」 「ならば,人間性とは病だ」教団が答えた. 地面が裂けた.影が押し寄せ,形を与えられた絶望の顔が迫る.カエルが刃を抜いたが,マジクは手を挙げた. 「ダメだ」彼はささやいた.「今回は,違う」 彼は目を閉じ,手を伸ばした.剣ではなく,心で.霧が彼の周りで煌めいた.彼がこれまでに感じたすべての痛み——孤独,疎外,絶望——が外へと溢れ出した.しかしそれは破壊するためではなく,繋がるためのものだった. 影たちがたじろいだ. カエルの声が震えた.「マジク...何をしているんだ?」 マジクは目に涙を浮かべ,微かに微笑んだ.「一人じゃないってことを,彼らに見せているんだ」 かつて怪物だった影たちが,変わり始めた.表情が和らぎ,瞳の輝きが怒りから悲しみへと変わる.彼らはマジクの方へ手を伸ばし,感謝の言葉をささやいた. 「覚えている...」「戦うつもりなんてなかった...」「ありがとう,友よ...」 教団のコアが叫び声を上げ,その声はノイズとなって分裂した.マジクはよろめいたが,止めなかった.彼は父親のことを,母親のことを,失われた家族のことを思った.誰にも届かなかった,泣き明かした夜のことを. 彼はカエルの音楽を思い出した.かつて自分たちの小さな家を光で満たしたあのバイオリンを. そして彼はささやいた.「傷ついてもいいんだ.覚えていても,いいんだよ」 世界が震え——そしてゆっくりと,美しく,霧が光り始めた.教団のコアは暴力的にではなく,解放されるように砕け散った. 絶望は光へと溶けていった.

その後

光が消えた後,彼らは穏やかな霧の野に立っていた.空気は以前よりも温かかった.平和だった. リンが最初に沈黙を破った.「...俺たち,勝ったのか?」 カエルは呆然と周囲を見渡した.「いや,癒やしたんだ」 ミラは涙を拭い,微かに微笑んだ.「勝つよりもずっと素敵ね」 マジクは静かに立ち,柔らかな地平線を見つめていた.「終わってないよ」彼は静かに言った.「教団は始まりに過ぎない.この世界にはまだ絶望がある.僕たちの中にもね」 カエルは彼の肩に手を置いた.「なら,立ち向かおう.一緒にだ」 マジクは彼を見上げた.瞳が潤んでいた.「一緒に」

その夜,ログアウトする前に,マジクは再び焚き火のそばに座った.霧は静かで,優しく,慈しむようだった. 初めて,彼はそれを怖いとは思わなかった. 今なら,それが何かわかる.敵でも呪いでもなく,自分が葬り去ったすべての反射なのだ.気づいてほしかった,愛されたかった,自由になりたかった自分の一部.

ヘッドセットを外したとき,部屋は静かだった.怒鳴り声も,ガラスの割れる音もしない.ただ自分の静かな呼吸の音だけが聞こえていた. 彼はヘッドセットを見て,弱々しく微笑み,ささやいた. 「ありがとう...エイエン」 そして,ほんの一瞬,刹那の間——バイザーから一筋の微かな霧が漂い出し,空気に溶け...小さく光り輝く光の形になったように見えた.

第5話:絶望の形 完

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